甘いもの好きな高橋くん
シュークリーム(1/9)
私の家はケーキ屋だ。
父がパティシエをやっていて、長年の下積み生活を経て、自ら経営を始めたのが10年前。
私が7歳の時だった。
母も高校、専門と調理科に通っておりお菓子作りのプロだ。
両親がお菓子を作るのを小さい頃から見ていたせいか、私もお菓子を作るのは大好きで、そこそこのものなら作れるようになっていた。
だから極論を言えば高橋くんからお菓子を気に入られるのは当然のことだったと言える。
高橋くんからお菓子を貰えるのは初めから決まっていた事だった。
そして、もう一つ。
プロの作るものを小さな頃から食べていたからその手のものに関しては舌が肥えている。
いくらお菓子作りの名人と言えどプロのものを食べ慣れた私が感動するはず無いのだ。
それなのに…。
高橋くんのガトーショコラは本当に美味しかった。
両親が作ったものと大差ないほどに。
まだまだ食べたいと思うほどに。
そんなものに出会ったのは初めてだった。
高橋くんの人格は最低だと思うけれど、料理の腕前は最高だ。
だから。
そう、だから仕方ないのだ、これは。
「これでいいんですか?」
「わ、すっごい高橋くん!上手ねぇ!
味も完璧!
貴方パティシエ目指してみない?」
「いえ、僕は食べる専門なので。
お菓子を作るのも自分が食べたいから作っているだけですので。」
高橋くんがうちに来ているのは仕方ないんだ。
- 9 -
back next
▷bookmark
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
top