誓い
ー漆章ー[閉ざした言葉](1/3)



「…はめたんですね」



尚は冷めた顔で虚勢を張りながら、そう呟いた。

口調も立ち居振る舞いももう偽る必要は無い。



何より、これだけの隊長達を相手取るなんてことは今の尚には出来ない。



「尚ちゃん…」



沖田の声が直ぐ近くで聞こえる。

溢れる感情を押し込め、尚は土方の瞳を真っ直ぐに見返した。


「何時から気付いていたんですか?
池田屋の時は…違いますね。
気付いていたなら私と沖田隊長を二人きりになんてしませんものね」

「疑惑を抱いたのは池田屋の時だ。
確たる証言を受けたのは昨日だがな」



沖田達が知ったのも同じ位だろう。

そうですか、と呟きながら、尚は気付かれないようにほんの少し後ろに下がる。



後、一寸。






「…もう、降参するしかないですね」



尚がポツリと呟くと、沖田は明らかに安心した顔をした。



その瞬間






ガツッ



「っ!!」

「…っ!!」



ドサッ

ドンッ



「総…っ!!」

「動くな!!」



土方の声を遮るように尚が声を張り上げる。

その場に居る者が全て、口を閉ざした。



床に寝転ぶ沖田の首元には、短刀。






「…ずっと貴方の側に居ましたから…。
貴方が気を緩めた瞬間の顔、反応の鈍くなる角度。
全部…知ってます」



その瞬間、尚は沖田の足元を薙ぐように蹴り、沖田を転ばせた。

そして、沖田が体勢を直す前に上に覆い被さり、隠し持っていた短刀を首筋に当てたのだ。



囁くように呟かれた言葉と共に、尚の表情が僅かに哀しみに染まる。

それに気付いた沖田の瞳が小さく見開かれた。



「尚ちゃ…」

「私の正体を知ったなら私の目的にも気付いているんでしょう!!?
どうして兄さんを殺したの!!
親友じゃなかったのかぁっ!!」



沖田の言葉を遮るように、尚は声を張り上げた。



- 76 -

前n[*][#]次n
/100 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]