○はじめまして (1/34)
保健室は、昔から好きじゃない。
薬のにおいが、やけに鼻につく。
あたしの手をずっと握る沙紀ちゃんに、
「じゃあ、あたしは授業でるね」
と言った。
沙紀ちゃんは寂しそうに「いってらっしゃい」と笑った。
そして立ち上がって保健室を後にしようとしたら──
パシッ
手首を掴まれた。
「…………」
おそるおそる自分の手首を見ると、長くて大きい手があたしを止めていた。
その手の持ち主は、間違いなく……まさとだ。
顔はとてもじゃないけど、みれない。
きっと──
心臓がもたないから。
うつむいたまま、しばらくその手を拒めなかった。
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