期限つき恋愛
[彼が気になる](1/12)


1週間私の椅子にかかっていた
紅茶男の制服は無事、持ち主の元へ戻り、
それと同時に私と彼の関係も
細い糸から、ひものように
だんだん太くなっていった。

彼は1年2組の岸本 海(かい)という男の子で
実は隣のクラスにいた。

私たちはLINEでつながるわけでもなく、
一緒に帰るわけでもなく、
休み時間に話すわけでもなかったけど
水曜日の昼休みに
屋上で会うことが暗黙の約束になっていた。

なぜそうなったかというと
彼に屋上で出会ったあの日が
水曜日で、次の週も何となく行ってみたら彼がいた。
それ以来毎週会うようになってしまったってわけ。

そこで彼と何かを語るわけでもなかった。
ただ背中合わせに座って
昼ごはんを食べるだけ。

ときどきどうでもいいことを
一言二言話す。

例えば…

「ゆり、お前って白いな」

「美白って言ってよ」

「死人みたい、はは」

「こら…(ってか微妙に真実を言い当ててるよ)」

とか

「ゆり、お前今何食べてんの?」

「ママのお弁当だよ」

「そっか…」

「背中合わせだと見えないね」

こんなこと。

一度も死ぬことについて話さなかった。




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