九条大臣が意識を失い、死に至るまで一週間……さらにその後三日経った夜、葵はとある雑居ビルに一人で向かっていた。
賑わう街中を掻い潜るように進むと、いつの間にやら人は少なくなっており、淋しい道を歩き続けた。
昨日の夜に百合から連絡があった。
『アマツカの正体がわかったわ』
「唐突ですね……大方、歩さんが関わったテロ事件の患者を調べたと、言ったところですか……」
『可愛くないわね……。まぁ貴方の言う通りだけど……』
「僕もその線で調べようと思っていましたから……で?その正体とは?」
『実は……………』
昨日のやり取りを思い出しながら、葵は目的地へ向かった。
葵はジャケットのポケットから、小さなメモ紙を取り出した。
「アマノビル……ここか……」
葵の目前には、いかにもくたびれた感じの古く細長いビルが聳え立っている。
葵は意を決した表情で、そのビルに入った。
ビルの入口を通過すると、暗い通路が葵を迎え入れた。
いかにも怪しげな感じを醸し出す通路に、葵の表情は険しさを増した。
通路の壁や天井……暗いために見えにくかったが、数年間誰も使っていない事はよくわかった。
暗い中で葵は持っていたメモ紙を、目を凝らして確認し、さらに通路を奥に進む……すると突き当たりに扉が現れた。
「突き当たりの扉……この扉か……」
葵はドアノブに手を掛けて、一気に引いた。
扉を開くと、そこは通路とはうって代わって明るさに満ちていた。
闇に慣れたせいか、その明るさに少し煩わしさを感じたが、葵は部屋に入った。