……とある会議室……
葵と歩……九条の3人は、山村の運転で九条大臣が倒れたとある会議室に来ていた。
九条の会社からおよそ一時間ほど車を走らせたところで、そこそこの山奥にある、九条大臣の隠れ家的事務所の会議室だ。
九条本人もこのような場所に、父親が事務所を構えていた事は知らなかったようだ。
シンプルな正方形の部屋……中央に大きな丸テーブル、そして各席に付いている液晶モニター……。
葵は呟いた。
「会議室に……液晶モニター……。ますます奴の可能性が高まりましたね」
歩は葵に言った。
「やっぱこの液晶モニターだよね?」
「奴の犯行だとすれば……間違いないでしょう」
九条の話によると、九条大臣以外に4名がこの部屋にいた。
名前は全てわかっているようだが……細かい素性までは、まだわかっていないようだ。
葵は九条に言った。
「九条大臣と他の4人の関係性も気になります。そして、何故このような隠れ家的な事務所を構え……ここで何をしていたのか……」
九条は言った。
「僕もそれは気になってね……そこの液晶モニターが繋がっているサーバーを調べたんだけど……」
葵が言った。
「何も残っていなかったのでしょ?」
九条は頷いた。
「その通りさ……」
葵は言った。
「しかし今ので一つの可能性が生まれました。それはアマツカの犯行だと……」
歩と九条はギョッとした。
葵は続けた。
「これが偶然が重なった事故だとしても……サーバーに何も残っていないのは不可解です。つまり何者かが意図的にデータを抜き取ったと考えるべきです」
二人は黙って話を聞いている。
葵はさらに続けた。
「つまりこの犯行はアマツカの仕業で、あの時の僕たちのように、液晶モニターを使って九条大臣達を転送させ……その証拠になるサーバーのデータを抜き取った……」
歩は呟いた。
「筋は通るね……」
「これが事故でないのなら……確実にアマツカの仕業ですね」
葵がそう言い切ると、九条は険しい表情をした。
「くそっ!でもなんで父が……」
葵は九条に言った。
「九条さん……僕に少し時間を下さい」
九条は目を丸くして葵を見た。
「何をするつもりだい?」
「白峰百合(しらみねゆり)に会います……」
葵の言ったその名に、九条と歩は目を見開いた。
歩は言った。
「あ……会えるのかい?」
「アマツカの名を出せば……」
九条が言った。
「しかし……彼女になにが?」
「それはわかりませんが……彼女は唯一アマツカの先手をいった人物です」
歩が言った。
「じゃあ……俺も一緒に……」
葵は首を横に振った。
「僕一人で行きます」
歩は激昂した。
「何言ってんだっ!?彼女の正体はまだわかってないんだぞっ!」
「一人じゃないと、彼女は会ってくれませんよ」
九条は歩の肩を叩いた。
「歩……葵君に任せよう……」
「正気か?九条っ!」
九条は葵に言った。
「葵君……ただし条件がある」
九条は葵に条件について話始めた。