LAST THREAD OF SPIDER
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暗闇に落ちる一本のロープが

螺旋状に揺れ始める。



私は両足を平行に浮かべながら

上体を横にねじり

視線を下に向けてナイフを下方部のロープへ構え

息を殺した。



そして


その数分後


うっすらと


その姿が


闇から


見え始める……










「はぁ……はぁ……はぁ……」





息遣いは荒く

その息遣いだけでは確認出来ず

震えながら登ってくるぼやけた姿を

一瞬で視界に捉えると

近付く前に私は冷たい言葉を発した。





「そこで止まって。」





私の声を聞いて驚いたのか

登ってきた人物は

一瞬ビクッと体を揺らし

顔を私の方へと見上げる。









「こ……子供!?」







驚くのも無理はない。

薄暗くてはっきりとは見えないが

十代前後の少年が

顔を血だらけにして

涙を流しながら歯を食いしばり

子犬の様に私を見つめていたんだ。









「た……助けて……」





何かに追われて怯えているのか

その少年は全身を震わせながら

私に懇願する。


でも……





「……ごめんなさい。あなたの状況はわからないけど、私は子供が得意じゃないの。」





自然と出た言葉……


それは

まだ色のついていない真っ白な私に

少しずつ色を付けていく。





「お、お願いします……僕を助けて……」





子供を助けるなんてごめんだ。

足手まといになりかねない。

誰かを守りながらの行動は自分の命を危険にさらす。


そんな強い意志を

自分の心に感じるが

なぜか

あのエリックという男の姿が

幻覚の様に現れ

私のその強い意志を邪魔する。






【まだお前はガキだ。子供なんだ。だが……お前は強く生きなきゃいけない。わかるな?基本、女は男に守られてちゃいけないんだ。強くなる必要がある。一人でも生き抜く力が必要だ。この世界は不条理だからな。忘れるなよ?】



【お前を強くしてやる。だから俺がここにいる。】





この声は……


また


あのエリックって男?






「ぼ……僕…………僕は……」






少年は私の制止を聞かず

一つ一つ手を伸ばし

ロープを登って近付いてくる。




私は

冷静になっていたはずなのに

状況が全く理解出来ていなかった。






【全てを……疑え。】






素早く判断が出来ない人間は……






【お前の両親の様に……命を落とすぞ。】






ドクッ……!!





ドクッ……!!





ドクッ……!!





ドクッ……!!










少年が


ジワジワと近付き


私のロープを繋いだ金具に手が触れた瞬間









「生きたいんだぁぁぁあああ!!!!」








少年の下の闇から


別の人影を


確認する……



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