LAST THREAD OF SPIDER
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【死ぬのは怖くない!!!自分の心が消えるのが怖いんだ!!!それなのに私らしくしろ?はぁ?これが本当の私だと思って言ってる?ホント呆れる!!!こんな事になって簡単に納得できる訳ないじゃない!!!彼は……彼はね……私の全てにおいての『師』だったんだ!!!】









何……!?


この幻聴……


この痛み……





「思い出すパターンもあるわけね……」





目頭が急に熱くなり

一人じゃない事に恐怖をいきなり感じ

ガクガクと震えだす両手。





「はぁ……頼むからやめて。勝手に戻ってこないでよ。徐々にしてくれないと困るのよね!!!」





苛立つ私は

表情を頑なに変えないまま

背中のリュックから

片手で果物ナイフを取り出した。


その刃渡り20センチの果物ナイフは

切れ味が鋭いとばかりに僅かな天の光を反射させる。


そう

もし下から登って来る奴が現れ

その人間が私にとって敵であれば

臨機応変に判断し

容赦はしないつもりだ……





……………………………………………………………






誰も見向きもしない……


とり残された


幼い一人の少女……





「パパ…………ママ…………」





昔から続いていたこの国の内戦に


一市民が巻き込まれ


中東の人盛りの多い市街地で


鼓膜を切り裂く様な爆風と共に


人間が駒の様に飛び散り


後から漂うジリジリと焼ける人肉の臭い……





「…………。」





数分前まで手を振っていた両親の幻影と


数分前まで綺麗だった少女の顔に


付着した


肉親の黒く赤い赤い血……




身体は硬直し


唇だけ震えを増し


その少女は


その瞬間


一度


死を迎えていた……








そんな少女に


強固なブーツの音を鳴らし


ゆっくりと近づく男が


一人……




少女の前で


静かに屈んで目線を合わし


こう言ったんだ。













「君は……奇跡を信じるか?」













若者とは呼べないが


その生に満ちた強いブルーの瞳と


短めに切られた金色の髪


ひたいの右横に見える縫った様な傷跡は


まるで


昔に会っていた様な


懐かしい風を感じる。




そして


彼の優しい口元は


その少女に何か別の世界をもたらす。





「俺はエリック。エリック・ラメラだ。」





笑顔でエリックと名乗る彼。


少女の表情に笑顔なんてありはしない。





エリック「一緒に……くるか?」





差し出された


優しく


残酷な


分厚い右手……






……………………………………………………………






「いっ……今のは……」





ギギ……



ギギギッ……




はぁはぁと息使いが下から近付き


私は突然見えた記憶と共に


片手に握られたナイフに力が入った。







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