亡星のガント 第3章オリドランが往く(1/8)


アルタ歴359年5月。
ガント共和国は伝令をダイゼル・ゾル帝国に向かわせた。
だが、伝令は帰ってくることがなかった。
ダイゼル・ゾル帝国の動きもない。
それを見かねたワイオレン長官はシャンテ・バルバード少尉を特別使として、
ダイゼル・ゾル帝国に向かわせた。

一方その頃…。

デュンベルンはオリドランを一日でも早く乗りこなすべく、
日々訓練に明け暮れていた。


「ここだな…!」

「っ…なッ…!」


デュンベルンが放ったペイント弾。
不意を突かれたアイトはペイント弾が避けられない。

デュンベルンは、わずか1月でダリオ航空部隊の主力パイロットさえ
押しのける力をつけていた。
教えるとその通りにしっかりと動く。
素人ではすぐにできない修正がすぐにできる。
指南役のヴァルタはもはや教えていて気持ちがよかった。


「凄まじい成長っぷりだな!!」


この試合を仕切っていたヴァルタの横。
ダリオは大きな声で話す。


「そうですね。恐ろしいほどもの覚えがいいですよ」

「だろうな!!見れば分かる!!普段こういった訓練に厳しいヴァルタ
が一度も怒っていないからな!!」

「ええ、不思議です。私の言ったことに対して無駄なく答えてみせる」


ヴァルタはオリドランを下りるデュンベルンを見つめながら続ける。


「あいつは元々乗っていた"宇宙船"の方が遥かに操縦が難しいと言っていた。
オリドランの操縦を苦にしない理由はこれでしょう」

「デュンベルンがオリドのエースパイロットになる日も近いな!!」

「それはどうですかね。オリドの現エースに勝てるとは到底思いませんよ」

「シェルマンか。まああいつは異次元だからな!!」


デュンベルンとは別に出てきたオールマンという名。
ダリオはヴァルタの言うことに納得していた。


「ダリオか。どうしたんだ?」


相変わらず上司へのタメグチ。
ヴァルタはもう半分諦めていた。


「ああ、言いたいことが一つだけあってな」

「なんだ?」


ダリオはデュンベルンの右腕をガッと強く掴んだ。


「そろそろ、私の部屋にこいデュンベルン!!」

「行きたくねえって言っているだろ!!」

「なぜだ!!私は君のことをこんなにも思っているというのに!!
君は知らないかもしれないが私は結構テクニシャンなんだよ」

「知らんわそんな事!!」


ダリオはデュンベルンの左腕で顎を掴み、背中に右腕を回す。
ダリオのまきつく攻撃。
デュンベルンは逃れられない。


「誰に向かってそんな口を聞いているんだ。私は上司だぞ」

「ヒッ…」

「いいか。これ以上動いたら君を…」


ダリオはデュンベルンの耳元で囁く。


「滅茶苦茶にしてやるぞォ…」

「あ…あああ…」


デュンベルンはやや涙目。
ヴァルタはため息をついて口を開く。


「ダリオ隊長。もういいでしょう?本題に進みましょう」

「ああ、そうだな!!」

「…」


デュンベルンはダリオが嫌いだ。


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