第1章オリド共和国(1/10)
「ここでいいのか?」
紙を持ち、キョロキョロ見回す男。
この男の名前はデュンベルン。
つい先日、この星ガントに不時着した。
デュンベルンはこの星のことを何も知らない。
そんなデュンベルンであるが、服装は周りとはかけ離れたものではなく、
近くの店に売っているようなこの星でいう普通の恰好だった。
なぜ金も家もあるはずのないデュンベルンがこの星の服を着ているのか。
答えはこの国、オリド共和国の人の家に泊めてもらったからだ。
デュンベルンにとっては命の恩人だ。
その恩人はこの国の軍人という職業についている。
デュンベルンは軍人という言葉は知っていた。
国のために働き、国のために戦う。
あまり関わりたくはないが、そううまくはいかない。
軍の上層部はデュンベルンを連れてくるよう恩人に通達したのだ。
さすがにそれに対して何もしない訳にはいかない。
何せ不時着したところを保護してもらい、ご飯まで頂いているのだ。
礼儀として行かない訳にもいかない。
恩人は先に家を出ていた。
後にこの街の中心にあるアルージャ広場の噴水前に集まる予定だった。
行先の地図をもらうもこの星の文字は読めない。
何とか絵だけで街の中心っぽく、噴水がある広場に辿り着いた。
とりあえず、座るか。
噴水前のベンチに座るデュンベルン。
待っていると…
「あの、すみません」
「?」
つばの広い帽子を深く被った女性。
顔がよく見えない。
デュンベルンは反応する。
「何か?」
「オリド王宮ってどこにあるかご存知です?」
どうやら、道が分からないらしい。
「観光で来たのはいいのですが道が分からなくて」
観光客。
どこか遠くの地方から来たのか。
「すまないが、他をあたってくれ。俺もここに来たばかりでここに来るのも一苦労だったんだ」
「そうですか」
女性はしょぼんと残念そうにしている。
「それは残念」
女性はそう言いながら帽子を被りなおそうとする。
瞬間。
「!?」
デュンベルンは一瞬違和感を感じた。
何かが今、身体をスッと貫通した、気がする。
「それでは他をあたります。ありがとうございました」
だが、その違和感もすぐになくなった。
女性は丁寧にお辞儀をするとその場から立ち去った。
なんだったんだろう。
そう思いながら座っていると。
見慣れた顔が遠くから来た。