帰ろっか。
.わたしはなにを (1/1)
期待に束縛された君は
翼を縫い付けられたお姫様
これで飛べるだろって
そう呟いてせっせと裁縫箱をしまう王子様
翼はすでに真っ赤に染まって重みが伝わっている
赤黒い翼を彼女に縛りつける
真っ白い糸は別々に
彼女に痛みを縫い付けた
どうかお助けを
黒い竜
早くこの城ごとわたしを焼き払って
さあ早く
あなたの赤黒い業火で私を解放してちょうだい
別にわたしはもう外なんか望んでないのよ
ほら
もう喉だって潰れた
ほら
壁を引っ掻いた爪はこのとおり
ほら
さんざんドアを蹴ったこの足だって
ここでの生活はそれはもう快適でしたとも
でもね、なぜかしら
とっても息が苦しいの
胸が痛いの
どこか遠いところに
もうひとりのわたしがいるの
迎えにいかなきゃ
あぁ、やっときてくれたのね
もうどのくらい待ったのかしら
もうどのくらい待ったのかしら。
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