外れぬ首輪(1/10)
「あぁ〜すっきりした。全て話せてよかったよ。
ずっとこの事が気がかりだったから・・・・・・、受け入れてくれて良かった」
全てを話し終えた後、急に雨が降り始めた。
急いで車に乗り込んだ私達は、お腹がすいたので夕食を食べに行くことにした。
話し終えた彼は先ほどまでの難しい表情から一変、笑顔になり、饒舌に話し出す。
「もう隠し事は何もない」
「そうだ、今度僕の家を教えるよ。一軒家なんだ。だから大きなテレビを置ける」
「大西さんは思っていた通り優しい人だった。僕の過去を許してくれるなんてさ」
「やっぱりあの時声をかけてよかった。あの時僕がとった行動は正解だったんだ」
お店に着き車を降りた時、私は1つの質問を彼に投げかけた。
「蒸発した奥さんとお子さんの事を、今でも思い出しますか?」
すると彼は遠くを眺めながら、こう答える。
「もう忘れたよ」
嘘つき。
忘れてない癖に。
なんでわかるかって?
それは私が父を忘れていないからだ。
蒸発して10年以上経つのに、今でも首が絞めつけられるように苦しくなる。
貴方もそうでしょ?
きっと今も奥さんが蒸発した時にはめられた首輪が苦しくて仕方がないに違いない。
家族に捨てられた者だけにはめられる、一生外れない鋼の首輪。
私にはその嘘はバレてしまうよ。
P.38
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