ブラックな恋愛

愛情表現(1/7)




今日のバイトは忙しかった。
何かを考える暇なんてなく、ただひたすら働き続けた。
時間が過ぎるのもあっという間。


やっと家に帰れる!
お腹空いた。
何食べよう。


そんな事を考えながら、私服に着替えるため休憩室へと向かう。
さっさと着替えてさっさと帰ろう。
別に家が恋しいわけじゃない。
むしろ帰りたくはない。
だって帰れば、またあの小汚い笑い方をするあの男と顔を合わせなくてはならないから。
なんであいつは家に居座ってるんだよ。
自分の家に帰れよ。
帰れない理由があるのなら、働いて安いアパートでも借りて姉と一緒に住めばいい。
お母さんだって追い出せばいいのに!


・・・・それか、私が家を出ればいい。
それは何度も考えた事があった。
実際に一人暮らしをしようと決意し、母に話した事もあった。
それに対して、母が私に放った言葉は

「アンタも家族を見捨てて出ていくのね。
やっぱりアンタは父さんに似てるわ。
その薄情な性格が」


何も言い返せなかった。
私が金を持って家族を捨てた父さんと同じ・・・・?


その言葉が私の心に深く突き刺さる。
母のたった一言で、私は一人暮らしをするのは見送る事にした。
あんな父親と同じにされるのが、苦しかったから。

だからといって、このまま黙ってこの家で生活するのは辛い。
早く抜け出したい。
このジメジメして息苦しい環境から。


次に考えたのは男。
誰かと結婚すれば、この家から抜け出す事が出来る!
誰でもいい。
私の事を裏切らず、傷つけず。
離婚しないで死ぬまで一緒に居てくれる奴なら!
別に優しくしてくれなくたっていい。
夫婦の会話だってなくなっていい。
ただ定年まで真面目に働き、借金を作らず、お金を持って逃げなければ誰でもいい。
・・・・・・・・・・そこまでハードルを下げても、私の隣には誰もいない。



着替えを済ませ携帯を手に取る。
ランプが点灯されており、確認するとメールが5件受信されていた。

5件も受信されてる。
誰だろう?

メール画面を開き、宛先を確認する。
メールを送ってきたのは 岡野裕也 全て彼からだった。


P.10
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