boy friend
[幼なじみ](1/15)
女の子って、やっぱり痩せてて可愛い子がいいんだと思う。
それに加えて色が白いとか、背が高いとか低いとか。
それって全部外見じゃん。
真面目に掃除したって、委員会の仕事を頑張ったって、落とし物を拾ってあげたって、優しくしてあげたって、顔が可愛くなければ誰にも響かない。
「ねえ、なんでそんなに太ってんの?ダイエットとかしないの?」
「チビでデブでこんなにブスとかなんなの」
教室の真ん中で、どうしてこんな吊し上げられてるんだろう。
あたしはただ、提出物を出しに移動してただけなのに。
ぶつかってきたのはあたしじゃないのに。
机の間の狭い通路を歩いていたら、ふざけてた男子とぶつかってしまった。
一応「ごめん」て謝ったけど、男子があたしにいろいろ言ってくる。
帰りの会が終わったばかりで、教室にはまだたくさん人が残ってる。
なのに誰も助けてくれない。
「自分で太ってること気づいてる?ヤバイよその足とか」
シンとした教室で茶化されてその場から動けないでいると、堪えきれずにもれた女子の笑い声が聞こえてきた。
なんでこんなに言われなきゃなんないの?
あたしだって気にしてるし、痩せたいと思ってストレッチとかいろいろ試してるのに。
チラッと横を見れば、一緒の小学校だった友達もニヤニヤしてる。
小学校を卒業して2ヶ月。
半分以上の子が同じ幼稚園で、学年2クラスしかなかった私たちはみんな仲良かったと思う。
小さい頃から一緒だったからみんなの性格はだいたい分かるし、合わない子もいたけどイジメもなかった。
なのに中学に上がってクラスが6組に増えて、下の名前で呼び合っていたのが名字呼びになって。
小学校では同じグループで仲良くしてた子が廊下ですれ違っても無視するし、同じクラスでも名字で呼ばれて。
チビデブってからかわれても見て笑ってるだけでかばってもくれない。
どうしてそこまで言うの?
なんで誰も助けてくれないの?
胸がドキドキして鼻もツンと痛くなってきた。
ヤバイこれ泣きそう。
あたしは下を向いたまま提出物を黒板前の机に置いて、人にぶつかりながら教室を出ようと走り出した。
後ろから笑い声が聞こえるけど、もう何がなんだかわからなくて。
どうして?
どうしてどうして、なんで?
もうそれしか言葉が浮かんでこない。
どうせチビでデブだし、ブスだし。
「ちょっ……!」
教室を飛び出して行く宛もなく廊下を走り出したところで、人にぶつかった。
その人があたしの肩を掴んだせいで、暴走できずにその場で立ち止まる。
なんなの!早くここから逃げたいのに!
「未玖、どうしたの?」
声変わりしたばかりの、聞きなれた声があたしの名前を呼んでくれた。
堪えきれずに溢れた涙と鼻水で顔が上げられないけど、この声はよく知ってる幼馴染みの声だ。
- 1 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
[編集]
[←戻る]