ネオヒューマン
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保健室の中は滅茶苦茶になっていた。
入口で淵野辺と桜井の二人が、うんざりとした表情で固まっている。
保健室は前衛的なアーティストが腕をふるったように、斬新なレイアウトがなされていた。
床にはベッドのシーツが無造作に広げられ、その上に教科書やら、ファイル、書類の類いなどが散りばめられている。
剥き出しのベッドの上には、診察用の丸椅子が、調子悪そうに横たわっていた。
さらに薬の瓶やら、消毒薬やらが、そこかしこに転がり、それらが納められていたラックが部屋の真ん中に横倒しになっている。
そのラックの上で、一人の少年が仁王立ちしていた。
「敵襲! ナカちゃんミサイル攻撃!」
「了解! 浜田軍曹!」
ラックの上で仁王立ちしていた浜田軍曹は、ベッドの陰に隠れていた少年に指示を出していた。
「くらえ! ミサイル攻撃だ!」
叫び声が上がった。
それと同時に、突然ベッドから何かが二人のもとへ飛んでくる。
「痛っ!」
桜井が頭を押さえていた。
「何だこれ?」
桜井の頭に当たって床に落ちたものを淵野辺が拾った。
「試験管?」
そこには黄色い液体が入っていた。
二人は訝って首をかしげていたが、次々と同じような試験管が投げつけられてくる。
浜田軍曹とナカちゃんは、不気味な笑みを浮かべていた。
「嫌な予感がする...」
「淵野辺の兄貴もですか...?」
入口にいる二人は辺りに散らばった試験管を見やりながら見つめ合った。その顔は恐怖に歪んでいる。
「今だ! ナカちゃん、起爆剤投入!」
「ラジャ!」
ナカちゃんの返事が響いた次の瞬間、小さな小石くらいの謎な物体が飛んできた。その物体は試験管が散らばった床に落ちたと同時に、爆発した。
爆発はそれほどでもなかった。爆竹よりも少し強め。しかし、狙った効果を発揮するには十分だった。
試験管の割れる音がする。
辺りには黄色い液体がばら蒔かれていた。
「やりやがった...!」
「臭っ!」
淵野辺と桜井は、揃って鼻をつまんでいた。
「浜田軍曹、小便ミサイル成功です!」
「ナカちゃん、ナイスショット!」
二人の少年は手を取り合って、喜びあっていた。
不意に浜田軍曹が振り返って言った。
「やい、そこの合計百歳男! どうだ、思い知ったか!」
浜田軍曹は、あのとき二人が捕まえた少年だった。
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