ネオヒューマン
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草むしりが、やっと終わった。
炎天下の中での作業だったこともあり、二人は正体もなく倒れ込んでいた。
汗が絶え間なく流れていく。
補給したはずの水分は、いとも簡単に垂れ流れし状態だ。

そんな腑抜けた淵野辺の顔に、急に陰が差した。

「こんなところで、寝転がってる場合じゃないわよ。また例によって、あの子が暴れてるから、早く来てちょうだい」

淵野辺が目を細めて空を見上げていた。

「何だよ。お前か」

「何だよ。じゃないわ! 毎度のことなんだから、あの子を連れてきたんなら責任もって最後まで面倒見なさいよ!」

寝転んだ淵野辺の顔を覗き込むようにして、一人の女が立っていた。
淵野辺の顔に陰を作っていたのは、彼女だった。

「仕方ないだろ。あいつだって覚醒してんだから、野放しには出来ないんだよ。悪さばっかするから、余計な...」

「それはそれは、素晴らしく崇高なご精神ですこと! とにかく早く来て何とかしなさいよ! 子供のなりをしてるからって、あの子だってもう50回以上は人生やり直してるのよ! 精神年齢だけなら、確実に50越えたおっさんよ! そんな奴が私のスカートめくるは、お尻触るは、やりたい放題やってんの! どうしてくれんのよ!」

女は金髪を振り乱して、段々と淵野辺の顔に迫ってくる。

「いや、待て待て。だったらシェリーだって同じように50年経過して...」

淵野辺の顔面に靴がめり込んでいた。

「私は永遠の22歳なの!」

「姉御、容赦ないっすね...」

「何か文句でも!?」

桜井は顔が青くなって小刻みに震えていた。

「あら、あんた大丈夫? 熱中症なんじゃないの?」

「いえ、大丈夫です。姉御にビビってるだけです」

鈍い音が聞こえた。
人間は恐怖にかられると、素直な感情を口走ってしまうようだ。
桜井の顔にも靴がめり込んでいた。

「とにかく、あんたたち早く医務室に来て、あの子を何とかしてちょうだい!」

シェリーは背中まで伸びた金髪を揺らしながら、颯爽と歩き去っていった。


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