ネオヒューマン
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あれから淵野辺は、ネオヒューマンとして新たな人生をスタートしていた。

立花や、坂巻と行動を共にし、ネオヒューマンとしての様々な知識や、行動規範を学び、いつしか一人立ちをしていた。

ネオヒューマンは主に3つの部隊に別れて構成されている。

一つ目は、研究班。
彼らはこの世の真理である、時の巻き戻りを多方面から研究し、この現象を根本から解決する方法を日夜探し続けてしている。
また、エンダーとの交戦などのために、武器や防具などの研究も行っている。

坂巻もこの組に所属している。
その中でも、かなり上の存在で、みんなに頼りにされている。

二つ目は、戦闘班。
彼らはエンダーとの交戦を担当している。
ネオヒューマンの長年の研究の末、作り出された強化スーツと、武器を装備し、暴れているエンダーを見つけ出して、排除していく役目を担っている。

そして、最後三つ目は、淵野辺が所属する、勧誘班。
勧誘班に所属するメンバーは、それぞれが一般社会に溶け込みながら、周りの変化に目を光らせ、怪しい動きをする人間をチェックし、覚醒していないかを確認していくのが任務だ。

そして、覚醒していることを確認したら、エンダーの魔の手に落ちる前に、ネオヒューマンへと勧誘していく。

だが、それだけでは、正直やることが少なすぎるので、戦闘班を手伝ったり、研究班が行えない、実地調査などの体力仕事をこなしていく。

要するに、勧誘班とは何でも屋だった。


「どうしたんです、淵野辺の兄貴? さっきからため息ばっか吐いて」

大きな栗のような尻が、淵野辺の目の前で喋っていた。

「なぁ、桜井。お前もネオになってから、そこそこ経つだろ?」

「はい、毎回毎回鉄砲玉として、ヘマして死んでいくような人生を変えてくれたのは、淵野辺の兄貴のお陰です。本当に感謝してます」

桜井はずんぐりむっくりな可愛らしい見た目に反して、ネオヒューマンになるまでは、チンピラのような生活を送っていた。

「いや、違う。そういうことじゃなくてな。俺はそうだが、きっとお前もそうだろう。なりたくて、なったわけでもないネオヒューマン。
それでも必死で頑張って、毎回の任務に精を出してる。みんなも頑張ってる。研究したり、奴らと戦ったりしてな。
そうやって一歩ずつ進んでいけば、いつかはゴールにたどり着けると信じてだ。この時の巻き戻りをなくすためにな...。
みんな頑張ってる。頑張ってるんだよ。格好いいぜ。それこそネオヒューマンだよ。
それなのにさ、何で俺たちはこんなところで炎天下の中、汗だくになりながら草むしりしてんだ? おかしくない? これネオヒューマンじゃなくても出来るよね? いや、これただの雑用だよね? しかも、毎回だよ。巻き戻るたんびに同じとこ。これ、頭おかしくなるっての」

「あ、兄貴...」

「何だよ?」

「すいません、また出そうです...」

「またかよ。前回は我慢できたじゃねえか!」

「すいません、お腹痛くて...」

「我慢しろ! 我慢しろって!」

「いや、無理です。すいません!」

桜井の大きな尻から、火に入れた栗のような大きな音がした。

「頼む...今回はもうここで、巻き戻してくれ...」

淵野辺は鼻を押さえて、後ろに倒れ込んでいた。


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