ネオヒューマン
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廊下は人でごった返していた。
部屋の中だけでなく、廊下も緊急事態を告げる警報音と、赤色ランプが点滅していた。
ここへ入ってきたときは、白衣を着た者しか見なかったが、今はスーツ姿の者が目立っている。

みんな一様にメインスペースへと、駆け出していた。淵野辺と立花も流れに身を委ねて一緒に走り出した。

「遅かったですね」

やがて、人波に押されながら、メインスペースへとやってきた二人の背後に声が掛かった。

「さぁ、これが一つ目の質問の答えです。ネオヒューマンが、なぜ武器を持っているのか...」

坂巻が壁に寄り掛かりながら、メインスペースの上空を凝視していた。

「うわ、こりゃまた派手にやってるな」

「何だこれ!?」

淵野辺は上空を見上げていた。
そこには巨大なホログラムが、スクリーンのように映し出されていた。

顎を上げ、食い入るように見いっている。淵野辺だけでなく、そこにいる全ての人間が、みんな同じ格好でミーアキャットのように上空を見上げていた。

これでゆったり座れるイスでもあれば、映画館で上映会を楽しむ人々にも見えなくもない。

映し出されている映像も、アクション映画さながらの迫力と轟音で、鼓膜や脳髄にダイレクトに迫ってくる。

だが、これには映画とは違うところが一つだけあった。
全て現実なのだ。スーツ姿の者たちが、武器を片手に誰かと戦闘を繰り広げている。

血が飛び、撃たれた箇所を押さえながら倒れていく人々。
もっと酷い場面も平然と映し出されている。普段は気づかない人間の壊れやすさを垣間見ることで、メインスペースの至るところで悲鳴が上がる。

「何だよ...何だよこれ!? 何と戦ってるんだよ...」

誰に教えられなくても、スーツ姿の者たちが、ネオヒューマンであることは、淵野辺にもわかっていた。

そのときホログラムスクリーンに、一際印象的な映像が映し出された。
姿かたちは、戦っているスーツ姿の者たちと何ら変わらない。
だが、その目だけは違っていた。それだけでわかった。
これが敵だ。
生気のない二つの目。
外は太陽光で満ちているのに、まったく光が反射していない。
その黒い瞳は闇そのもの、全てを飲み込むブラックホールに見えた。

「彼らが我々と、戦っている者たちです。我々は、彼らを”終わらせる者“という意味合いを込めて、エンダーと呼んでいます」

「エンダー...」

「そうです。我々ネオヒューマンが世界を守るため、時を巻き戻すのに尽力を尽くすのと反対に、彼らエンダーは、世界を終わらせようとしているのです...」


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