ネオヒューマン
[9](1/1)
淵野辺の二つの黒い瞳には、大きな展示場のような空間が映し出されていた。
理路整然と区画されていて、何をやっているのかわからないが、それぞれの固まりが各々のブースを形成して、何らかの研究のようなことをしている。
さらに、そのブースの間を白衣を着た男女が忙しなく駆け回っている。
よく見ると、洗練されたボディーの見るからに速そうなスポーツカーや、オフロードバイク、果ては装甲車など、子どもの頃にミニカーで遊んでいたような車両が、大量に並んでいたりする。
かと思うと、その近くには福笑いのお面をつけて、必死にロボットダンスを練習している集団までいる。
「いったい何なんだ...ここは!?」
秘密基地の入り口は、高いところにあったので全景が見渡せた。
だが、それでも一番奥の端の方などは、ほとんど何をやっているのか見えないほど広かった。
「まぁ、ここじゃなんだから」
立花は自宅にでも招くように、淵野辺を階下に誘った。
坂巻が、すでに一人で先を歩いていることに気づいて、二人は急いで後を追いかけた。
「なぁ、何なんだよ、ここ...!?」
「ついていけてないって感じ?」
三人は近くにあった階段を一段一段、降りていく。
「当たり前だ。ついていけてないどころじゃない。大体あれは何だよ? 武器だろ? ネオヒューマンってのは何なんだ!?」
淵野辺が指差した先には、物騒な武器の類いも大量に並んでいた。
「ですから、それを今から説明しようとしているのではありませんか」
坂巻の呆れたような声が、前から聞こえてきた。
「納得の出来る説明じゃなかったら、俺は帰るからな」
今まで一般的な生活しかしてこなかったのに、急に武器やら装甲車やらと、怪しげなものを見たことで、淵野辺の中に拒否反応が起こったのかもしれない。
そんな混乱の中だった。
いきなり坂巻の声が鋭さを帯びた。
「それは自由ですが、覚悟していただかないといけないことがありますよ」
今までと違う坂巻の反応に、淵野辺は気圧されていた。自然、助け船を期待するように、後ろにいた立花を振り返る。
しかし、立花も常とは違い、少し上段から見下ろすように、鋭い目線で淵野辺を凝視していた。
「何なんだよ...」
淵野辺の声は震えていた。
- 9 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?
[編集]
[←戻る]