ネオヒューマン
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「やめときな」
飛び掛かろうと身構えた男の背中に、軽やかに声が掛けられた。
男は反射的に後ろを振り返る。
さっきまで確かに誰もいなかった。
だが、そこには小柄な男が立っていたのだ。
少年のような風貌で、幼い顔付きだったが、不思議と外見とは不相応な貫禄のようなものが感じられた。
前の女は気付かずに歩き去っていく。
ゆっくりと時間が流れていった。
やがて、しばらくすると小柄な男が再び声を掛けてきた。
「お兄さん、気付いてから何回目?」
「何のことだ?」
「ありゃりゃ、こりゃ大変。またビギナーが増えちゃったかな」
「何を言ってるのかわからない。俺は忙しいんだ。どいてくれ」
男は女を襲おうとしたばつの悪さから、逃げるようにその場から離れようとしていた。
しかし、次の瞬間にはもう、男の足はその場に釘付けにされてしまっていた。
「ちなみに僕は、もう800回くらいやり直してるけどね」
「え...?」
「どうやら、覚えがあるみたいだね」
悪戯な笑い声が小さく響く。
「あんた何者なんだ...?」
男の声が裏返る。
「そうだね、自己紹介が遅れた。僕の名前は立花タイチ。みんなからはタッチーって呼ばれてるよ」
再び悪戯な笑顔が立花の口元に浮かんだ。
「ふざけるな! 何者だって聞いてるんだ」
「別にふざけてなんかないよ。初対面の人には名乗るのが礼儀じゃない。淵野辺さんは、そうは思わないの?」
「何で俺の名前を知ってるんだ...!?」
「あはは、前々回辺りから挙動がおかしかったんで、少し調べさせてもらってたんだ」
「お前本当に何者なんだ...!?」
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