ネオヒューマン
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男は夕暮れ時の街中を、ふらふらと頼りない足取りで徘徊していた。
その様子はいかにも病的で、周りの人々が避けるようにして歩いていた。

「どうせ何をしても意味がない。またやり直しになる。どうすればいいんだよ、俺は...」

男は尚もふらふらと歩いている。
すると、前からガラの悪い男たちがやってきて、男とわざとぶつかった。

「おい! ちょっと待てやコラ!」

「何だよ?」

男は自棄になっているようだった。
ヤクザのような見た目の男たちに向かって、自分からふらふらと歩み寄っていく。結果は目に見えていた。

「調子に乗ってんじゃねえよクソが!」

男たちはゴミ捨て場に向けて、罵声を浴びせて去っていった。

そこには無惨に投げ出された男の姿があった。男は力なく呟く。

「痛ぇ...、ふざけやがって...」

身体中傷だらけだ。
やっとのことで立ち上がったと思ったら、またバランスを崩して転倒してしまった。

「ちくしょう...」

男は再び立ち上がって、日暮れの空を仰ぎ見た。そして、またゆっくりと歩き出す。
その足取りは次第に歩幅を狭め、やがて道の真ん中で止まった。

「そうだ。どうせやり直しになるんなら、いっそやりたいように振る舞うか...」

男の目には狂気の光が宿った。
辺りにギラギラとした視線を送る。
道行く人々、宝石店、ATMなど、男の目が獲物を見定めるように忙しなく動く。

男の鼓動が速くなる。
呼吸も深く、荒々しい。

男は用もないのに、通りを何度も往復していた。そして、ついに獲物を決めたのか、男は動き出す。

一人の女の後ろをつけて歩き出していたのだ。

男の目は冷たく暗い。
しかし、獲物に近づけば、近づくほど怪しい光が、底の方から浮かび上がってくる。

無防備にも、女は段々と人気の少ない通りへと向かっていた。

辺りは深閑としている。
木々が茂った小さな公園が先の方に見える。

女の後ろを忍び足で男がついて歩いている。男は背後を気にするように、何度も振り向く。人影は見えない。
チャンスだった。

女を公園の暗がりへと連れ込もうと、男は意を決した。
男は息を整える。そして、背後から一気に近づいて女に飛び掛かった。


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