[王子様とお姫様?](1/29)
『やっぱり来てくれたのね』
『篤』
目の前の女は
そういうと俺の頬に触れた。
「どういうことっすか?
麗奈サン」
『そんなに怒らないでよ。
あの子そこで寝ているだけだから』
部屋の隅にあるゆりかごみたいな吊り下げられたソファーの中に
チエミはいた。
「寝てるだけ…?」
ピクリとも動かない
「なんで…」
『なんでこんなこと?ってことかしら?』
なんでチエミに裕子のこと吹き込んだ
なんでチエミを危ない目にあわせた
なんでチエミなんだよ
『篤はあたしと同じだった
本当に欲しいものは手に入らないの
あたしと同じ』
同じ……
同じ?
同じってなんだよ。
「麗奈サンさ。本当に欲しいものって
俺じゃないってことだよね?」
本当に欲しいもの?
「もし俺が欲しいなら
あげるよ。」
俺でいいならくれてやる
「だからチエミを傷つけるのは
許さない」
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