闇孔雀と全裸の魔少女〜聖骸布の謎〜
[〈1〉](1/6)
「明菜、疲れただろう。
事務所に着いたら起こすから寝ていていいぞ」



市川彦麿呂が呟いた。



彦麿呂は細面で、女性のように睫毛が長い。



そして長身で美形。



よくホストに間違えられる。



本宮明菜は、小柄で童顔で髪が長い。


その為か、年齢も20歳前後に見える。


二人が一緒に歩いていると、前から歩いて来た人達が通り過ぎてから、よく振り返る。



「ありがとう。少し寝るわ」



 明菜は助手席に乗り、その言葉を聞いて目を閉じた。



 車の心地よい振動で、引き摺り込まれるように明菜は深い眠りに落ちていった。



 ふと、気がつくと小学校の校庭に立っていた。



 明菜は回りを見渡した。



 校門の近くに山川の姿が見える。



 明菜は校門に向かって走りだした。


 「あっ、山川君 どうして急にいなくなったの?」



 山川は黙って明菜を見詰めている。


 (あっ、これは夢だな)



 何となく明菜には分かった。



 以前は、よく同じ夢を見ていた。



 山川に話し掛けると、すぐ目が覚めた。



 「明菜、急に居なくなってゴメン」



 山川が初めて喋った。



 「どうして、急に消えたのよ。心配したんだから……」



 「実は明菜に危険が迫っていたから、僕は消えたんだ。
僕と君は別の世界で魔獣に襲われ、
゙ウインドウ"の魔法でこの世界に逃げ込んだ。

そして、゙アスミレイト"の魔法でこの
世界の僕と君に同化したんだよ」


 「私はその記憶が全く無いわ」


 「魔獣が狙っているのは、君だから安全の為に記憶を僕が消したんだ」


 「では、小学校の時の山川君の記憶は……」


 「その記憶も消した筈だが……」


 「もう少し詳しく教えて……」


 (バカね……私……夢なのに……)


 「我々からすれば、この世界の住人の僕と君はドッペルゲンガーになるね。

この世界の君、つまりドッペルゲンガーに命に及ぶ危険が迫った時に、オリジナルの君が顕在化するようになっていたのだよ」


 「そうするとオリジナルの私が顕在化した時に彼女の記憶も引き継ぐという事なのね……」


 「そう言う事だね」


 「これからどうするの?」




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