黄色い糸
[プロローグA](1/1)
確かにどれもこれも、似たり寄ったりで、パット見て、これだと決めかねるものばっかりだった。
「いかがですか?さっきのが、まだ良い方でしょ?…決まらないようでしたら、次の方に紹介させていただきますので、もう一度、番号札をおとりになって、お待ちいただけますか?」担当者は面倒臭さをかくそうとも、していなかった。
「わかりました。じゃあ、さっきのでお願いします」物件を探しにここに通いだしてもうすぐ2年、納得のいくものなんて一つもなかった。しょうがない、俺は妥協することにした。
「そうですか、ありがとうございます。もし、どうしても合わないようでしたら、2年後には解約出来ますので、それまでは、頑張ってくださいね」
「2年以内の解約はできないんですか?」
「出来ないことはありませんが、次の物件を紹介するのに、2年の待機期間が必要になりますから、待機するぐらいなら、そこにいた方がましかと思いまして」
「わかりました。何時から入れますか?」
「10分で手続きは完了しますので、今日からでも大丈夫ですよ」
「分かりました。ありがとうございました」俺は席をたった。
「ありがとうございました。次の方どうぞ」
俺は『憑依物件案内所』をあとにした。
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