私の居場所を狙うあの子
[崩壊](1/6)
「お前、いい加減にしろよ」
あ、彼ってこんな顔もするんだ。
ずっと近くで見てたのに
それは初めて見る表情で
今にも私の胸倉を掴みそうなのは
私の好きな人。
何で?どうして、こうなったの?
そう落ち着いて考える前に
鈴村七海と瓜二つのあのデブが
小刻みに震えながら
顔を伏せていて
間違いなくこの男が原因だと
嫌でも察しがつく。
「さっき、無理矢理鈴村に連れてかれたって言ったよな?」
「…そうだけど?」
「お前が先に入ったの、見たって奴がいるんだけど?」
「え、違う!だって「じゃあこれは?」
これは一体何?
そう言って差し出されたのは
奇抜な色のスマホだった
そこに映っていたのは
森の中に入って行く私と
鈴村七海の後ろ姿。
「…ご、ごめん。本当に、ごめんなさいっ冴島さん…」
ああダメだ。
作り笑顔すら、まともに作れない
「…お、オレ。冴島さんの写メがほしくて…鈴村も一緒だったから、つい…」
「まだ嘘つくつもりかよ?」
この男も、鈴村七海と同じで
とても危険な匂いがする。
ああ、失敗。
この湯川という男にも
いつか成敗を下さなくちゃ。
それにしても
ちーくんは つくづくドブスに甘いね。
ま、いいけど。
だって鈴村さんは…
「でも足を踏み外したのは鈴村さんだよ!それに「冴島さん」
鈴村七海が転落して
約一時間半。
何故か薄っぺらいキャミソールに
下着姿のまま
誰かをおぶっている
巨体の女が私の名前を呼ぶと
笑いが吹き出しそうなった。
え、どうしたのその格好?
は?
なにあのデブ
ほんと笑えるんだけど
鈴村七海の生き写しと言っても
過言じゃないくらい
姿形が似ているし
やだもう、ほんとにっ
「…もし鳴海さんが死んじゃったら…私は…っ!!冴島さんのこと、絶対許さないから!」
私は今幻を見ているのかな?
その証拠に
私のすぐ近くでその様子を見ていたちーくんは
口を開けたまま突っ立って
ブタ川くんに至っては
何故か両手で目を覆ってるし?
…え?
どうして鈴村七海が
鳴海芽衣子と一緒にいるの?
そもそも
下の体操着は何処へ行ったの?
それがあまりに気になって
目を凝らし
彼女の背中でグッタリしている
鳴海さんをよく見ると
何故かそれらし物が巻き付けられていて
あぁ
普通のサイズより大きいから
マフラー代わりにちょうどいい。
それなら納得…
いくわけない
「鈴村!?」
「だだだだだだ大丈夫ぁぁぁ!?」
自分の体操着を脱ぎ捨てて
一目散に
彼女の方を目掛けて走って行くちーくんも
その彼の後に付いて行った
ブタ川くんも
どうして?
乃彩の方が比べようのないくらい
可愛いいのに
女らしさの欠片もない
あの子の方へ行ってしまうの?
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