私の居場所を狙うあの子
[幼馴染み](1/7)

湯川くん、明日来るのかな?

帰り道、何となく彼の話を持ち出すと

想像以上に単純だとか、思ってたより良い人かもなんて今日の感想を千秋と話しているのに

何故か藤堂くんの名前が一度も出てこなくて
少しだけ気まずい。


あれ?こんなに暗かったの?」


行きはそうでもなかったのに
とっくに夕日は沈み

街灯がやけに眩しく感じる帰り道は
何だか少し緊張する。




「あ、ごめん。皆川くん帰る道違うんだっけ?」


「まあ違うけど。喉乾いたからスーパー寄っていい?」


ほら、あそこ。

そう言って意図を伝えてくる彼に
じゃあ待ってるねと
当たり前のことを言ったのに

一緒に行かねーの?と来たもんだ。



行く!っ私も行く!」

素早く自転車から降り近くに止めると

私達は回りから見るとカップルなのかな?

なんておこがましい事を考える。



うわ。寒いね


現実から目を覚ませと言わんばかりの冷風は
紛れもなくスーパーから漂うもので

まだ四月だというのに
夏場と勘違いしてるんじゃないかと疑うほどだ。



「寒いの?」


いや!、全然?」


デブなのにと思われたくなくて
咄嗟に嘘をついたけど

さっき寒いって聞こえたとクスクス笑われ

また墓穴を掘ってしまう私に

いい加減にしなさいよ!と言いたいところだけど、彼といるのはやっぱり楽しい。



「飲み物見てくるけど鈴村さんは?」


「じゃあ私も」


入り口から飲料水コーナーまで二メートルもないはずなのに少し長く感じたのはこれから起こる悲劇の前触れで

湯川くんのことや、隣にいる彼と過ごす時間に浮かれきっていた私はまだ気付かない。



「あら、千秋くんじゃないの」


私には乃彩の他に
もう一人敵がいるという事を。


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