【解体屍書】
[第9話『出してくれ』](1/1)
深夜2時、俺は弟・慎二と一緒に家路を歩いていた。
田舎から出てきた慎二と居酒屋で飲んでいたのだが…まさかこんな時間になるまで話し込むとは思わなかった。
出会わなかった月日が思いのほか長かったことを暗に示している。
単に懐かしいってことだな。
「なあ兄貴?
家の近くに墓地なんかあって怖くないの?」
確かに始めは不気味に思ったが、慣れてしまえばどうということはない。
所詮幽霊なんていないし、妖怪も空想の産物なのだ。
そういえば昔から慎二は怖がりだった。
今も内心ビビって…
『 』
…………
…………
俺と慎二の歩みがピタリと止まる。
慎二も止まったってことは今のが聞こえたのか?
俺は慎二の顔色を窺うと青ざめた顔で慎二もこちらを見ていた。
案外俺も同じ表情をしているのかもしれない。
「兄貴、今の聞こえたかい?」
「あの墓地から聞こえてきた『ここから出してくれ』って声…」
俺達はどちらが言うでもなく家まで走り出した。
<出してくれ・完>
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