【解体屍書】
[第6話『腐臭』](1/1)
もう30分が過ぎた。
彼女を待たせるとは太ぇ野郎だと私はあいつが来たら蹴りを入れてやろうと決めていた。
すると私は異常な臭いを感じた。
とても臭い。
生ゴミの臭いを嗅いだ時よりも強烈な臭いが私の鼻を襲う。
私は辺りを見回したが異臭の原因はわからない。
そうなると気になるもので私は必ずこの臭いの元を見つけてやろうと決心した。
やがて、私はむせるようになる。
臭いが強烈過ぎるのだ。
これってひょっとして近づいて来てる?
だんだん目も開けられなくなってきた。
目の端に涙が溜まる。
もう我慢出来ない!
なんでみんな平気なのだろう。
その時、人混みの中に一際異様なものが見えた。
それは黒い靄。
男の人の背中に黒い靄が見える。
私はそれから今までよりもっと強い臭いを感じた。
これは腐臭だ。
子供の頃、空き地に捨てられていた猫の死骸の臭い。
これはそれよりもっと酷い。
黒い靄が近づいてくる。
私はそれから目が離せない。
近づく度に靄が何かの形を成していることに気づく。
それは人のように見えた。
黒く長い髪をした女性のように。
<腐臭・完>
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