【解体屍書】
[第4話『何か来る』](1/1)
「ヤッホー!」
父さんが大きな声で叫ぶと山の向こうから『ヤッホー』と声が返ってきた。

僕らは今、山の頂上に来ている。
家族でハイキングに来ているのだが、いやいやさすがに「ヤッホー!」は恥ずかしい。
それにこの流れは絶対、

「孝太郎、お前もやってみろ」

そら来た。
やまびこなんて今更恥ずかしい。
それにヤッホーってどういう意味なんだ?
母さんも笑ってないで何かフォローしてよ。
このまま黙っていても絶対にやらされる。
なら空気を読んでやるしかない。
凄く恥ずかしいが。

「オーイ!」

ああ、やっぱり恥ずかしい。
ヤッホーよりはマシかと思ったがオーイも十分恥ずかしい。
ああ!やだやだ!
しばらくして『ウオオイ』と声が返ってきた。

あれ?
今のって僕の声?
僕の声ってこんなに野太くないよね?

『ウオオォォォォイ!』

山の向こうから突然凄い大きな声が聞こえてきて僕はビクリと肩を震わせた。
なんだ?
今の声は?
僕は不安になって父さんを見た。
父さんも驚いたみたいだったが「向こうの山にも人がいるんだよ」と笑って言った。
でも、僕はなんだか凄く怖くなってしまって急に帰りたくなった。
その時、

『今から行くからなぁ!』

と声が向こうの山から響いて来た。
え?
何か来る?

<何か来る・完>

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