【解体屍書】
[第2話『切断』](1/1)
急いでいる時に限ってタクシーってのは捕まらなくて困る。
探しものっていうのはいつもそうだ。
本当に欲しいって時に無くてどうでもいい時には簡単に見つかったりするのだ。
そう言ってぼやいていると一台のタクシーが私を通り過ぎ、しばらくして止まった。

私はその幸運に安堵し駆け寄る。
タクシーの中から女性が降りてきたのだが、スタスタと去っていく女性を私は不思議に思った。
だって、中にまだ誰か乗っているじゃないか。
なんで置いていくのだろう。

私は見た。
タクシーの中から伸びる腕を。
その腕はタクシーの縁を掴んでいて、私は危ないなと思った。
だってもしあのままドアが閉まったら…

バタン

「え?」
私は驚きの声をあげた。
閉まった?
その時ボトボトと何かがタクシーのドアから落ちた。

あれ…あれって…
私は驚いてタクシーの後部座席を見つめて悲鳴を上げる。
後部座席には誰も座っていなかった。
誰も座っていなかったから彼女は去って行ったのだ。

じゃあ…
じゃあ、あの腕は誰の腕?
誰の指があそこに落ちてるの?
タクシーは震える私を置いて去っていく。
さっきまでタクシーが停まっていた場所に白っぽいものが虫の幼虫みたいにモゾモゾと蠢いている。

<切断・完>

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