心愛・・・・時を越えて 第五章浪士組(1/10)


私がこの時代に来て二ヶ月が経った

私は毎日、試衞館道場に通い稽古に励んでいた

そして時は動き出す

斎藤が江戸を去らなければならない事件が起こる

あれから毎日‥斎藤に送って貰うようになった

とは言っても‥‥

斎藤はやはり無口でこちらから話かけないと話さない

でも、この沈黙も私に取っては幸せだった

現代に居た頃と思いは変わらない

ただ傍にいられればよかった

私は毎日が平穏で忘れていた

斎藤が江戸から居なくなることを






伊織「今日も負けてしまいました‥‥」


山口「気にするな‥お前は確実に強くなっている‥」


伊織「そんな慰めはいいです‥勝たなければ意味がない‥」


山口「ではもっと強くなればいい」


人に優しい事を言ったりすることが苦手な斎藤に取ってはこれが精一杯の優しさなのかもしれない


伊織「山口さん‥お願いがあります」


山口「何だ‥」


伊織「刀を買いたいのです‥買いに行くのに付き合って下さい」


山口「何故刀を持つ必要がある‥」


伊織「‥‥ダメですか‥ダメなら土方さんにお願いします」


山口「俺の質問に答えるんだ」


伊織「必要になるからですよ‥‥」


山口「刀を持つ意味を解っているのか」


伊織「解っています‥」


私は真剣な眼差しで斎藤を見つめた


山口「わかった‥が‥約束しろ‥一人で余り考えるな‥何かあれば必ず相談すると」


伊織「わかりました‥約束します‥」


山口「では明日の帰りに見に行く事にしよう」


伊織「ありがとうございます」



 



斎藤は試衞館に戻り土方の部屋に居た

伊織が刀を買いたいと言った事を話していた


土方「これから俺達に何が起こるというのだ‥‥伊織は俺達の行く末を知っている‥‥刀が必要になる何かが起こるということなのか」


山口「そういう事でしょう‥‥私もまだ人を殺めた事ありません‥‥伊織に人を斬る事が出来るのでしょうか」


土方「わからない‥」


山口「‥‥‥‥‥」


土方「はじめ」


山口「はい」


土方「お前は伊織の事どう思っている‥」


山口「どう思ってるとは‥‥」


土方「お前は人と関わりを持つのを避けていただろう‥そのお前が伊織を構うのは何故だ」


山口「わかりません‥‥ただあの真っ直ぐで歪みのない瞳が離れないのです‥‥彼女が話した事は正直まだ信じていませんが彼女の眼は嘘を言ってない‥」


土方「そうか‥」


土方はそれ以上何も言わなかった



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