心愛・・・・時を越えて 第一章2009年8月(1/3)


「伊織ーいけーっ」

剣道部員の期待を胸に伊織こと森 伊織は構える


「はじめーっ」

審判の声がかかると共に辺りは静まり返る

伊織は目を閉じたまま動かない

先に動いたのは相手側の選手

「やぁぁぁぁーっ」

その声に閉じていた目を開け伊織は呟いた

「遅いーっ」

「やぁぁぁぁーっ」


客席を含め審判も動きがとまっている。

伊織の動きが見えなかったのである‥ただ伊織の後ろで相手側の選手が膝をついていた



「一・・一本‥勝者‥森 伊織」

「伊織様ー」

客席から黄色い声援が飛ぶ。

ベンチに戻り防具を外し隣の試合を見た。

男子の決勝



「あの人は」

私は一人の男に目を奪われていた。





「一本‥勝者‥斎藤 一」

斎藤 一

そう私の恋い焦がれるあの方と同じ名前




「伊織‥伊織ってば」

彼の試合に見入ってると横から呼ぶ声が聞こえた。

「はいー」

「何してるの、表彰式始まるよ」

「あ、うん‥今、行くから」

もう少し見ていたい気持ちを押さえて立ち上がりその場を後にした。



表彰式が終わり私はみんなと別れ一人でバスを待っていた。


「森 伊織さん」

いきなり後ろから名前を呼ばれた

「はい」

振り向くと彼が立っていた。


ドキッ


「斎藤‥さん!?」

私は一瞬時が止まったみたいに動けなかった。

「森 伊織さん」


ドクンッ ドクンッ

心臓の動きが早くなる

「はい」

「突然、すみません少しお時間頂けませんか」


ドクンッ ドクンッ

また心臓が跳ね上がる

今‥何て言ったの?

「森さん‥」

私は我に返り時計を見た

「あっ、は、はい・・少しだけ‥でしたら」

「またこれから稽古されるんですか」

「はい その予定です」

「是非‥手合わせ願えませんか」

「私とですか」

「はい」

私はワクワクした‥この人は強い‥この人とまた戦える‥そう思うだけで心臓がまた高鳴りを上げた

「じゃあ、うちの道場に来て下さい」

「いいんですか」

「はい」


バスが来たので私は斎藤の手を取り乗車した



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