このタイミングで (1/17)
今日は土曜日。
あっという間に訪れた週末は、みんなで約束をしていたあの日だった。
休みだってのに、わざわざ早起きをしなきゃいけないというのは、結構な苦痛で。
仕方ないけれど、俺はほんの少しの憂鬱を感じずにはいられなかった。
下りの電車が発車する様子を、駅の待ち合わせ室から見下ろす。
そのとき、後ろから肩をぽんっと叩かれ、聞き覚えのある声がした。
「おはようっ!」
ゆっくりと振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた少女がいた。
「……ああ、花宮先輩。おはようございます」
「なんだか元気ないね。まだ調子悪い? 大丈夫?」
「体調は大丈夫なんですが、俺低血圧だから朝は辛いんですよね……」
ふああ、とあくびをしながら答えると、花宮先輩は口元に手を当てながらくすくすと笑った。
可愛い。
改めて、そう思う。
リボンがたくさん付いている真っ白なコートの下には、ピンクベースの花柄のスカートがひらりと揺れる。
くるくるに巻いた長い髪の毛からは、かすかにシャンプーの匂いがする。
雪のように白く透き通る肌で、ほんのりと頬を赤く染める少女は、誰の目だってひくほどだと思った。
……こんな人が、俺のことを好きだって言ってくれてる。
奇跡みたいな話だよな。
一生に一度、あるかないかだ。
それなのに俺は、こんな可愛過ぎる方の告白に待ったを掛けている。
いいご身分だよ、本当。
でも、それも今日でおしまいだ。
俺は、自分の心にけじめをつけるためにここへ来た。
言うんだ、必ず。
絶対に。
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