譲れない想い (1/4)
土日をはさんだ月曜日。
俺は、風邪も完治して無事登校してきたってわけだ。
教室に入って、自分の席に着く。
俺の姿を見た瞬間、翼宿は真っ直ぐにこちらへ歩いてきた。
来るとは思ってたけれど、やっぱりまだだめだ。
…………目、合わせられない。
「…………よ、旺恭」
「…………おう」
まただ。
沈黙。
空気が重いんだよ、ここだけ。
互いの息遣いがやけに目立つ。
いつもだったら煩わしくて仕方のない教室の中の雑音でさえも、なんとなく恋しくなってみたり。
気まずさが顔に出る。
翼宿の顔はいまだ見られてないけれど、たぶんこいつも同じだろう。
そう思っていたその時、翼宿が先に口を開いてくれた。
「……風邪、良くなったのか?」
「……まあな」
普通だ。
少し、安心した。
分かってる。
分かってるんだよ、ちゃんとお礼を言わなきゃいけないってことくらい。
素直になれないのは、俺もだ。
人に言う前に、自分で性格を直していくべきなんだろうな。
じゃないと、説得力がない。
ゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着かせる。
…………言いたいことは、きちんと言葉にしなきゃ伝わらないんだ。
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