
友達からの宣戦布告 (2/8)
――――ガラッ
教室のドアを勢いよく開ける。
まだ担任の姿が見えないのを確認すると、俺は静かに席に着いた。
座ってすぐに、少し寝ようと机に突っ伏そうとする。
その瞬間、俺の真正面にある男の下半身が目に入った。
もちろん、制服は着ているけれど、見ていて不快感極まりない。
イラッとして、眉をしかめる。
目の前に立ちはだかるその人物に、あえて顔を見ることはしなくとも、大体誰だかは予想がつく。
それが、声を発せられることにより、さらに明確となった。
「…………旺恭、詳しく話を聞かせろ」
小さく舌打ちをして、髪の毛をわしゃわしゃと掻きむしる。
何をお前に話せばいいんだよ。
――――翼宿。
「果怜先輩、泣いてたぞ」
「知ってる」
「知ってて、なんで助けない」
翼宿の低い声が、怒っているように聞こえるのは俺だけだろうか。
まだこいつと目を合わせてはいないけれど、きっと、そういう顔をしていると思う。
俺だって、もし果怜が何かに困って泣いているようなら、いくらでも手を差し伸べる。
でも、今回はそれが出来ない。
俺に、出来るわけはないんだ。
…………だって。
「……泣かせた原因である俺が、あいつを助けられるわけがないだろう」
俺がそう言うと、翼宿の両手は拳を作り、ぐっと握り締められた。
こいつの苛々が、ストレートに俺に伝わってくるようだった。
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