ベイビーロジック!


男の勘 (1/11)




「憂鬱だ。」



ずっと、そう思っていた。

前から不思議でしかたなかったんだ、この冬の体育祭は。




まだ俺が中学生だった頃、三年に学年が上がってさあ受験だなんだとバタバタし始めた時があった。




将来の夢も、なってみたい職業も、興味があるものも、趣味も特技も、なあんにもなかった俺は、ただ果怜に進められたというそれだけの理由でこの高校に入ろうと思った。

別に、行く高校が普通科でも商業科でも工業科でも、こだわりひとつない俺は、果怜の言葉になんの考えもなしに『わかった』と頷いた。




それから、希望する高校のことは多少は知っていた方がいいよなと、昼休みにひとり進路相談室に行って、パソコンからネットに繋ぎ、高校のホームページへと飛んだ。




開いた瞬間、薄暗い室内に画面に映るピンクとオレンジが、俺の網膜を攻撃する。

無駄に明るいトップページだと思った。




ちょうど目も慣れてきた頃、俺はマウスを動かした。

学校概要から学校長挨拶、校訓、教育課程、施設の案内に生徒状況がずらりと並んでいる。




だが、俺にはそんなこと、どうだっていい。

一番知りたいのは、学校行事。ただそれだけだ。




大抵の人間の人生の中で、もっとも重要視される青春時代。

それを、この高校で過ごすんだから、それは確実に知っておかなければならなかった。




俺は、『勉強をしに』ではなく、『青春を謳歌するために』高校へ進学する。

そう言っても過言ではなかった。




目的の箇所まで、ページを大幅に飛ばして読み進める。

なかなか、見たいところが見つからない。




貴重な昼休みの時間を割いて、こうして見に来てやってるのに。

もう少し、見やすいレイアウトを考えろよ。

俺がもしこの高校に入ったら、生徒会長になってこのホームページを一から作り直してやる。




こんな『☆新任紹介☆』なんてものはいらない。

『教頭先生の眼』も、『111,111,111番目の来訪者は?!』も、『2011年度ぷちニュース♪』なんていうのも、いらない。

無駄なものが多過ぎるんだよ。




そんなことを考えながらふとアクセスカウンターに目を向けると、俺が踏んだ番号は"111,111,113番目の来訪者様"だった。

まあ、少し、残念だった。




とまあ、そんなふうに誰に向けるわけでもない文句を心の中である程度たれると、俺はそこでやっと見つけた。

一段と明るく光る、『年間行事予定』の文字を。


- 28 -
前n[*][#]次n
⇒しおり挿入
/261 n


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]