片想い、片想い
[片想いの残酷](1/23)



* * *



「あ、そうだ。凛ちゃんも行かない?」



大学が夏休みということもあり



私はこことばかりにバイトを
入れて、毎日忙しく過ごしていた。



今日は珍しく午前中からのシフトで



三時になって休憩をしている
ときのことだった。



事務所に行くと篤志さんと
谷さんが話していて



私の顔を見るなり谷さんが
唐突に話を振ってきた。



「何の話ですか?」



「ビアガーデン。

ほら、あのショッピングモールの屋上で夏の間やってるんだって」



一昨年建ったとこだよ、○○駅の、と谷さんが続けて



すぐにそこが頭に浮かんだ。



美雪さんが働いている
ジュエリーショップの入っている、
あのショッピングモールだ。



「来週定休日あるじゃん?

その日にみんなで行こうって
篤志さんと今、話しててさ。

凛ちゃんも行こうよ」



私は思わずそこで篤志さんの
顔色をうかがってしまう。



あのライブの日から数週間が過ぎ



何か少し距離を置かれている
ような気がしているからだ。



篤志さんはバイトのときは
それまでと変わりなく
接してくれているけれど



“線引き”が少し露骨になったような。



例を挙げるならば



あれ以来夜中の電話は一度も
かかってきていない。












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