涙は心の中に、思いは瞳の中に。2
[第二章](1/23)
手元に銃がないだけでも、まだ生々しい感覚がそこにはあって吐き気がする。
左手をゆっくりと握る。
そうしただけでも、震えは治まらないってのに。
「…………」
固執、してなきゃよかった。
この暗殺というものに。
こんなとこにいていいわけがない。
帰る、場所。帰らなきゃならない、場所。
みんなに、会いたい。
「珍しくタバコ吸わないんだねぇ」
「…………」
「そんな怖い顔しないでよ。知ってた? 俺、あんたより一個上で喫煙者で酒も飲む」
結局、いるのは喫煙ルーム。
だから、疑問に思わなかった。
この場所を使うのは俺だけではないことに。
「…………お前、俺のストーカーかなんか?」
「まっさかー。行く先々に、たまたまあんたがいるだけ」
「…………ッチ、いい気になりやがって。あー、クソ。俺だけの居場所だったのにな!」
高遠が偽るのをやめたから、なにも知らなかったのに。
なにも知らなきゃよかった……。
「本当はね。入りたくて仕方なかったんだー、ここ。言ったでしょ。もう偽らないって」
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