チューベローズの女
[また同じ人を好きになったんだ](10/10)





「春がクルミのことを好きなのはすぐにわかったよ」


「でも自分から好きって言った手前なかなかフれなくて」

「好きな人がいるのにそれでも私とは関係を持つんだと思ったら、 私が春にしてることなんて大したことじゃないと思えたし」


「いつでも私をフれたのに欲が薄れてから別れてクルミに走った男に怒られるなんて絶対イヤ」


「加害者のくせにそんな顔しないで」







説得力がありすぎる


他に好きな人がいるのに涼と付き合ってた俺

別れてすぐにクルミにいった俺。


たしかに俺は自分が1番可哀想だとか思ってた、この話を聞く今の今まで。






「涼、俺は前とちがう」



「それは自分で言う言葉じゃない」


「涼にとっては試しでいい。
付き合ってよ」






時計を見た涼は一言、"わかった"と言った。



0時が過ぎてから成立した会話に
俺のお願いを聞いてくれた涼。




ただ俺は涼がどんな事を考えているか。

何に引っかかっているか。

どんなことに悩んでいるのか。




気付くこともできなかった。






今となっては少しわかってきたよ。


涼が本気で向き合おうとしない理由は
今までの俺が作り上げてきたもの。

それを間近で見てきた涼にとって
乗り越えられない問題なんだと思う。


どうしてそれを見てきたのが涼だったんだろう。


なんで俺、好きになれる人がこんなにも限られてんだろ。


……涼しかいないんじゃないかと、本気で思ってるよ。


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