君だから

眠り姫(1/1)




「おはよう、真人。
今日もいい天気だぞー!」
病室に入り、窓を開ける。
心地よい風とともに、残りわずかな桜の花びらが入る。
「そういや、去年言ってた花見、いつにする?
早く行かねぇと、桜終わっちゃうぞ。
お前との花見、俺ずっと楽しみにしてたんだぞ。
そりゃあさ、今まで何回も言ってるけど、恋人としては初めてだから。
花見の次は海かなぁ。
俺がお前の水着選ぶからさ、俺のはお前か選んでよ。」
ベッドサイドのパイプ椅子に座り、愛しい恋人を見つめる。
閉じたままの瞳と聞こえない彼の声。




あの日俺が彼を見つけたときには、青や紫になった体中から血を流し一人分ではあり得ない量の白濁のかかった肢体を晒して倒れていた。
直ぐに抱き起こし呼びかけると、閉じていた目をうっすらと開けて俺を見る。
掠れた声で俺の名を呼び、再び目が閉じた。
それっきり意識をなくし、俺の呼びかけに答えず、冷えていく彼の姿に恐怖を覚えた。



あの日から半年。
体の傷は順調に回復したが、眠り続けている彼。
「今度こそ絶対にお前を守るから。」
早く目を覚ましてくれ。
目を閉じたままの彼の唇に、そっと口づけをした。




彼を強姦した男たちも指示した女も捕まり、あとは彼が目覚めたら全て解決、悪夢は終わると思っていた。

だが、本当に大変なのは彼が目覚めてからだと、この時の俺はわかっていなかった。
守るということがどんなに大変な事なのかを、全く分かっていなかった。


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