☆[番外編:先生のお気に召すまま](8/13)
先生は僕のどこが好きなんだろう?
いつから?
それはすごく気になってて、でも聞けなかった。
だから鈴木先生が『葛城、お前って澤野のどこが好きなのか言ってみろ! いつから好きなのかも言え!』と言いだして驚いたけど気になって落ちつかない。
僕も知りたいです。
そんなことを言えないからし恥ずかしくて先生の顔を見ることはできない。
「なんでお前に言わなきゃいけないんだよ」
「だーかーらー俺はキューピッドだからだっつーの!」
すっかり酔っぱらってしまってる鈴木先生が身を乗り出しすのに、うぜぇ、と先生はうんざりとした顔をしてお酒を飲んでる。
「澤野ー! お前も訊きたいだろ!? な!? お前からも訊いてろ! "先生、教えて"って甘えて訊けばイチコロだ!!」
鈴木先生が今度は僕のほうへと身を乗り出して、訊け訊けって言ってきた。
ど、どうしようってちらっと先生を見たら先生も僕を見ていて目があって、思わず逸らしてしまう。
胸がドキドキしすぎて俯く。
「遥にはお前が帰ってから言うからいい」
「それじゃ意味ねぇだろ! 俺が聞きたいんだよ! お前の恋バナなんてなかなか聞けないからな! せっかくこんな面白ネタがあるんだから、言え! 俺のおかげで澤野と付き合えるようになったんだろーが!」
「くそ酔っぱらいが……」
ドキドキはまだしてるけど、先生はしつこい鈴木先生に苛立ってるみたいで口調が荒くなってきてる。
僕は割って入ることもできなくて先生と鈴木先生のやりとりを黙って聞いた。
しばらく同じような応酬が続いて、先生が大きなため息をついた。
「犬だよ」
そしてとっても面倒臭そうにそう言った。
「犬?」
「実家で飼ってる犬に似てんだよ」
「……」
犬……?
僕……先生の家の犬に似てるの?
「あ?! てきとーなこと言ってんなよ!」
「適当じゃない。ほら」
なんだろうと顔を上げれば先生がスマホを操作して鈴木先生の方へと見せる。
「……」
「似てるだろ?」
え、もしかして犬の写真なのかな。
「……確かに」
え……。
気になって、思わず僕も見ようと身を乗り出したら先生が僕にスマホを渡してくれた。
「……」
チワワだった。
「な? 似てるだろ? 名前はアオイ」
「……かわいいですね」
「だろ?」
「なるほど、これは癒されるな」
鈴木先生はあっさりと納得した様子で頷いてる。
そんな鈴木先生と僕に先生はアオイくん(?)の写真を見せてくれた。
驚いたことにたくさんのアオイくんの写真がスマホには納められてた。
お腹を見せて甘えてるアオイくん。
笑顔のアオイくん。
餌を食べてるアオイくん。
遊んでるアオイくん。
「……」
なんだろう。
「可愛いだろ?」
なんだろう。
似てるっていうことは僕のことも可愛いって言ってくれてるのかなって思うんだけど。
アオイくんの写真で溢れたデータフォルダ。
もしかして―――僕ってアオイくんの……身代わり?
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