運命の穴(1/19) 「県立亜流布高等学校」 コンクリートでできた校門にそう文字が刻まれている 夏休み真っ只中ということで、そこには昼間から部活動に勤しむ生徒たちの姿が大勢いた 校庭の中心では頭を丸くした男子生徒らがバットを振り、体育館では女子生徒らがバスケットボールを追いかけている そんな活気のある雰囲気の中、2階の窓から様々な楽器の音色が校舎を包むように流れてきた 吹奏楽部だ 少し窮屈な音楽室で、40名ほどはいそうな部員たちが必死に演奏していた 3年生は既に引退しており、現在は1、2年生だけの活動となっている この学校の吹奏楽部は強豪という訳でも弱小という訳でもない 毎年県大会銀賞、良くて支部大会には進めないダメ金レベルである 音楽室の壁に飾ってある賞状を見ると、今年は県大会銀賞だったようだ そして、今演奏されているのは「アルメニアンダンスパート1」という曲で、略してアルメニとも言われる 「あんずの木」、「山うずらの歌」、「おーい、僕のナザン」、「アラギャズ山」、そして「行け、行け」の5つの曲から成り立ち、吹奏楽界では有名な曲だ この曲を来月に予定されている演奏会で披露するため、部員たちは練習に明け暮れている 主人公はこの亜流布高校吹奏楽部に所属する高校2年生だ すると、指揮棒を振っていた中年の男性教師の手が急に止まった 前n[*]|[#]次n ⇒作品?レビュー ⇒モバスペ?Book? [←戻る] |