64/64 0006 豊島 アヤカ セイヤは気まずそうに、エイアから目をそらしていた。 「とにかく彼女の機転のおかげで 僕は先に上がれた」 ユウガはそう言うと、タバコを取り出す。 キィン 間髪入れずに、セイヤがデュポンを鳴らして火を着けた。 ユウガはセイヤに、仕草だけで礼を表現する。 「多くの推測と確かな保険がある」 「だから僕達は勝てなくても 高確率で負けないんだ」 SCMを付けていないエイアに、彼女自身の機転。 さりげない提案に隠されていた、死活問題の勝敗の定義。 この勝負はユウガ達にとって、初めから負けのない勝負だったんだ。 「真の勝利者とは 勝利よりも敗北をよく考える」 あたしは今まで聞いたユウガの話で、思ってしまう。 「僕の好きな言葉だ」 やられた。 あたし達は、初めからこの2人にまけ 『 カチッカチカチ 』 口の中のSCMが鳴った瞬間、あたしの心臓が突然ドクンと動く。 呼吸がしにくくなり、過去の人生最高の緊張感があたしを襲った。 そして数秒後。 バッチィン! あたしはセイヤに、思い切り殴られていた。 セイヤの怒りの顔を最後に、あたしは気絶する。 |