29/29 0004 目黒 マサカズ 深夜、3時くらいにやっとルシエの住む町まで来た。 まだルシエとメールし始めた時期に、隣町とは聞いていたが、意外に近いんだな。 俺はルシエを家の近くまで送る。家がバレたくないのか、近くで降ろすように指示された。 車の降り際、電話番号を交換させられ、口の中のSCMは絶対に外すなと念を押される。 「これで終わったと思うなよ?」 そう言い残すと、ルシエは夜道を歩いて行く。可能ならこのまま車でひいてしまいたい。 車通りの少ない深夜の道を走らせ、家に向かう。 ああ。長かった。驚くほど長い1日だった。 自宅のアパートに着き、部屋に帰る。 我が家だ。俺はシャワーを浴びて、すぐに寝ることにした。 もう何も考えない。今日を振り返らずに、とにかく寝よう。 そう思いながら、布団に入ると。 『 キュイ───ン 』 口の中のSCMが鳴った。 俺は、反射的にルシエが近づいたのかと思ったが、振動は1回だけで、何事も無かった。 そうだよ。全部これが悪いんだよ。なんなんだよ、SCMって。 |