伝説の果て
[灼熱の冷水](1/27)
イシス


最初に砂漠に住み出したやつはどこのどいつなんだろうか。
恐らく、そんなことを覚えていない程度には昔からこの地に住んでいたんだろう。
何の顔も見せず、どこまでも続く不毛の大地と太陽の灼熱。
そして、環境に順応しなお人へと牙を向く砂漠の魔物達。
このような生き地獄に生まれながら、楽園を求めて移動するわけでもなく、諦めて暑さに朽ち果てるわけでもなく、わずかな水辺を囲んで暮らしている。
動物や魔物にはそうそうない知能を持っているくせに、人間というのは全くもって非合理でしぶとい生き物だとつくづく感じる。


アッサラームに劣らない市場の活気を横目にそんなことを考えつつ、僕は最後の荷物をようやく下ろし終わった。
いつ来ても、この国への道のりは生半可なものではない。
砂漠の環境に慣れている筈のキャラバン隊の商人達も当然のように疲れきっているのだ。 砂漠の生まれでもない僕が無事であるべくもない。
おまけに道中の戦闘や環境で、装備品のいくつかが壊れてしまった。
用事を一通り終わらせて休むにはまだ少しかかりそうで、それを考えるだけで疲労感で目が眩みそうになる。

しかし、悪いことばかりとも限らない。
普段なら食料や装備の新調には多少なりとも出し惜しみする所だが、こうまで尽きてしまえば、自分に遠慮せず心置きなく買い揃える事ができる。
加えて女は宿の手配のために走らせているので、今だけは一人で店を見て回れる。
その間にせいぜい見繕うとするか


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