執事様と婚約者様
6章 加西の家(1/8)
…何故私は今ここにいるんでしょう?
「これ、どうぞ」
黒い執事服を着た男性が私にタオルを渡してくれた
「どうも…」
「今温かいものをお持ちいたしますね」
フワフワのソファー
広い部屋
豪華な屋敷
勿論これは市瀬家の屋敷ではない
「着替えはできた?九条さん」
「え…あ、うん」
それは、あのいじめっ子、加西由実の屋敷だった
「まさか、市瀬のお家に向かう途中で会うとは思わなかったわ。あなたと話がしたかったの」
紅茶のカップ片手に話しかけてくる加西由実は、まさかあんな幼稚な嫌がらせをする人には見えない
生まれながらのお嬢様としてのオーラを見にまとっている
「…で、話って言うのは?」
「簡単な話よ。こないだの続き。」
こないだ?っていつ?
「…ねぇこれは本気なんだけども。園田さんか皐月さんをくださらない?」
……………ん?
待った待った
園田さんはまだわかるとして、なんで皐月さん?
「あなたは知らないでしょうけどね、私と皐月は小さいころからの知り合いなの」
「はあ…」
「正直、あなたとの政略結婚より皐月にとってはいい話だと思うわ」
「…けど、あの…川崎家としては、仲直りしたいから私たちを結婚させるんですよね?」
「別に今時財閥同士が仲良くなくてはいけないなんてことないわ。あなたのお母様だってそうしたんでしょう?」
…まぁ…確かに。
でも色々迷惑かけたみたいだし…
「好きなの?皐月さんが」
「へっ?えっと…」
好き?皐月さんが……?
考えてもみなかった
何故かわからないけど、婚約者なのに…
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