雨のなか
鍵盤の上 3/3
何か喋っていた
イヤホンを取る
「申し訳ない、なんて言っていたんだ??」
飼い主は女性だった
柴犬だったからてっきり中年のおじさんかと思っていた
恐らく大学生くらい
ジャージの裾を折り曲げていて
スニーカーが似合う足をしていた
「あぁ、いや。うちのマメタが邪魔をして悪かったよ」
「マメタ…この犬の名前??」
女性はうなずいた
「いや、邪魔ではないよ…犬は好きなんだ」
俺はマメタの頭をまた撫でる
マメタは目を瞑りしっぽをふった
「あらあら、マメタめ…主人を目の前にどうどうと浮気かい」
彼女は笑ってちゃかした
「ははっ、君は引っ越してきたのか??」
すると彼女は驚いた顔になる
「なんでそのことを??」
「俺は毎朝ここに来ているからな、君は今日はじめて見る…」
なるほどと彼女は言った
「地元から大学に通ってたんだけど遠くてね、思い切って引っ越してきたんだ」
「そうか、ということは駅の近くの芸術大学か??」
「そうそう、もしかしてあんたも??」
俺はうなずいた
大学で見たことがないということは学課が違うのだろう
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