午前5時に晴れは来る。

・眠れない午前4時。(2/10)






音の方向に振り返りもせず、淡々と紫煙をくぐらせる私の背中になにかが飛んでくる感覚。




「おい」




雑に呼ぶ声、投げられた新品煙草。





「シカト?うざ」


「あんただって無言で入って来たじゃん」




背中に当たって落ちた煙草を拾い上げてから部屋の中に戻る。


今日も今日とて、この男は色々雑だ。




「ただいま、とでも言えばいーわけ?」


「バカじゃないの?ここ私んち。」


「じゃあ無言でいいじゃん」


「………」




売り言葉に買い言葉。
何を言っても無駄だと判断した私は、大きく息を吐くだけの返事をした。


それをどう受け取ったのかはわからないけれど、目の前の他人は服を一枚脱いでその辺に投げ捨て、ソファにどさりと座り込む。




「心、ビール買ってきたから冷蔵庫入れといて」


「え、嘘。飲んでいい?」


「は?お前飲んでたんじゃねーんかよ」


「足りない」


「アル中はしょうがねぇなぁ」




ビニール袋から少しぬるい缶ビールを取り出し、私に差し出される。
迷わず受け取りタブを持ち上げひとくち含んでみると、うん、やっぱりぬるい。




「おれにも」


「私んだよ」


「おれが買ったんだからおれんだわ」


「もらったからもう私の」


「おれのでもあるし」




手からパッと奪われた缶。



不貞腐れて唇を尖らせると、そいつは私の顔を見て満足げに口角を上げた。






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