恋に落ちるその日まで -2nd-
[夢の途中](1/12)
「本当に…それが月雲の答えでいいんだな?」
「はい。真剣に考えました…」
「… …ふぅ。まぁ、そうなる覚悟をしての人事ではあったんだが…後悔することはないか?」
「ふふっ それは、どうでしょうか。未来のことなので分からないですけど…ただ、必ず後悔する未来より…夢を、叶えたいんです」
「… …夢か。そうだな…月雲の夢の邪魔はできないからな!上には伝えておくよ」
「ありがとうございます!」
失礼しました。と深々とお辞儀をし、ミーティングルームを退出する。
と、神崎が壁に背中をあずけた格好で、相変わらず涼しい表情を見せた。
「…報告」
そう一言呟くと、親指で場所変えるぞ。と、合図をする。
神崎に誘導されるがままに、神崎の背中に続いた。
この3年間、いつもこの背中を見ていた気がする。
すごく遠くて…でも、ようやく少し、触れる事ができたと感じた。
鉄壁と思っていたこの背中は、意外にも虚勢で出来ていて…ただ、その虚勢を真実に変えてしまう彼の仕事は…彼の心の具現であった。
自分の意思を伝えるための手技としてのこの仕事は…神崎にとって、分身のようなものなのだと、分かった。
その時から自分は、もっともっとこの人から…学びたいと強く思った。
神崎にもっともっと…寄り添いたい。
これからもずっと、神崎の隣で… …
そう、思った。
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