アカルイミライ

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最後の人は男でした


もうずっと独りで

言葉を忘れ
感情を忘れ

あの方には
何も見えていなかったのかもしれません


檻の中でじっと


時折叫ぶのです

誰か話してくれ

頼むから
話をしてくれと


わたくしたちは
言葉を使いません

全て伝える事ができるので

彼はそれが辛い
沈黙の中で気が狂うと

もがき続けました

自傷行為は続き
手枷足枷

哀れな姿でした

ただ
わたくしたちは彼を守る為に
仕方なかったのであります

やがて彼は息をひきとりました

その表情は
幸せそのものでありました

社会性を失ってなお
長く生かされる恐怖

檻の中の獣達は
そんな気持ちなのでありましょう

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